琵琶湖の静振

 
 Seiche(セイシュ)の和訳で、「せいし」と読みます。湖面(水位)の振動で、洗面器の水が揺れるのと同じ現象です。静振の周期(T)は湖の大きさと深さによって決まり、T = 2L/(gH)1/2で表されます。ここで、Lは湖の長さ、gは重力加速度(9.8m/s2)、Hは湖の平均水深です。びわ湖(琵琶湖)では周期4時間、70分、30分などの静振が観測されますが、このようにいろいろな周期が存在するのは、基本振動のほかに倍振動や三倍振動などが発生するためです。ちょうど管楽器を吹いたときに1オクターブや2オクターブ違う音が生じるのと同じ理屈です。静振の原因は主に風で、水位の変化も通常は数cmにすぎませんが、琵琶湖大橋付近では静振に伴う振動流がはっきりと観測されます。

 また、湾や水路でも静振は観測されます。たとえば、湖北の塩津湾の静振の周期は約35分で、振動の節は竹生島あたりにあります。瀬田川では洗堰の存在によって顕著な静振が出現し、その周期は約70分です。従来は瀬田川の鳥居川という地点で琵琶湖の水位を代表していましたが、静振の存在によって水位が時間変化するため、現在では琵琶湖の5か所の水位の平均値でびわ湖水位を求めています。


 余談になりますが、コップの水をこぼさないで運ぶためには、コップの静振と共鳴しないようにゆっくりと歩くことが肝要です。一方、スープ皿のような浅い容器では静振の周期が長いので、ゆっくり歩くとスープがこぼれてしまいます。


瀬田川における水位の時間変化。
約70分の周期をもつ静振による変動が顕著ですが、変動幅は1〜3cm程度です。。

静振に関連した情報が、
遠藤・岡本・伴・岡本(1982):「びわ湖における流況の連続記録(U)」
滋賀大学教育学部紀要、32、にあります。



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